もっと遊びたいから別れて

 

 

「お前とは結婚すると思うんだよね。

 

 

 

だけど、正直まだもっと遊びたいんだよ。

 

 

 

 

――――――だから、別れて。」
「ふざけんなー!!!!!!」

 

 

 

ビールジョッキ片手に、叫ぶ私

 

 

中村 咲季(さき)、23歳

 

 

昨日、3年半付き合ってた彼氏にフラれました。

 

 

 

 

 

「ちょっと咲季、あんま大きい声ださないでよ、恥ずかしい」

 

 

親友が失恋して傷ついてるのに、いたって冷静なのは杉本亜紀。

 

大学の時の塾講師のバイトで一緒になり、社会人になった今でも飲みに行く仲良しさん。

 

 

「何よ『もっと遊びたい』って。何が『お前とは結婚すると思う』よ!!。
そう思わない?誰が結婚したい、っつたのよ。他に好きな子がいる、とかならわかるけど、勝手すぎない?」

 

 

「んー、若月ってバカだと思ってたけど、やっぱりほんとにバカだったんだね」

 

 

そんな一言で片づけないでよー、と恨めし気な目で亜紀を見つめてみる。
「いやさ、この前咲季仕事で来れなかったバイト仲間の飲み会でさ、
男どもが話してたのよ。コンパしまくってて持ち帰っただの、なんのって。それ聞いて若月のヤツ、バカみたいに『うらやましいー』って連呼してたよ。咲季にばれないようにすればいいものを、わざわざ別れるって。

 

正直、通り越してバカでしょ」

 

 

 

 

 

ごもっとも、ですよね――――――――――

 

 

 

 

 

つい昨日まで彼氏だった若月真弘も、亜紀と一緒で大学時代のバイト仲間。

 

 

だから、亜紀もヤツのことはよく知ってる。
大学生ばっかりで、サークルみたいなノリのバイトだったから元々みんな仲が良かった。

 

 

そして、いつも輪の中心に居て、みんなを楽しませてくれる真弘のことは最初の頃から気になってた。

 

 

学部は違うけど大学は一緒だったから、お互い一人暮らししている家も近くて。

 

バイト帰りに、家の近くでご飯食べたり、たまたま趣味が同じこともあり、2人で過ごす時間が増えて

 

「咲季といると、飽きないなー」

 

なんて屈託なく笑う真弘の笑顔が好きで、どんどん真弘に惹かれていった。

 

だけど、真弘には高校時代から付き合ってる彼女が地元にいて
遠距離だけど、バイト終わりに毎回メールしたり飲み会中でも電話に出たり。

 

そんな彼女大事にしてる姿も彼の魅力の1つだと思ってた。