鳥肌

「そろそろだな」

 

 

そう言って立ち上がった陽さんからは
普段のちょっと気だるそうな雰囲気からは想像できないオーラがでていて、目が離せなかった。

 

 

そして、現場に緊張感が走った。

 

 

そこから一気に撮影は進み

 

急遽追加したカットも撮ることができ

 

 

森さんも満足気だった。
撮影が終わり社用車だったため
会社に一旦戻った私と岡田さん。

 

すぐに帰るつもりだったものの、PCを立ち上げてメールの確認を始めてしまうと、ついつい仕事を始めてしまい同じように仕事をしていた岡田さんに声をかけられた時には、既に日付をまたいでしまっていた。

 

「咲季ちゃん、お腹すかない?金曜だし軽く飲んで帰ろうよ」

 

 

――――――――

 

 

 

 

「やっぱり、陽さんすごいですね。なんか雰囲気一気にかわる瞬間とか鳥肌たちました」

 

 

「俺も初めて陽さんの現場立ち会った時、びっくりしたよ。今回のも実際ビジュアルでてくるの楽しみだな」
話題の中心は、昨日、今日の撮影のこと。

 

現場での興奮を思い出しながら、いよいよ来週末に迫ったコンペに向けて、すべきことを確認しあった。

 

疲れもあり本当に軽く1杯飲んで店を出て、タクシーを拾おうと大通りに向かっている途中で足が止まってしまった。

 

「ん?どうかした?」

 

私の視線の先に目を向けた岡田さんは、あぁ、という顔しながら核心を突いた。

 

 

「もしかして、元カレ?」

 

 

「岡田さん、すいません。やっぱりもう1軒いきましょう」

 

返事の代わりにそういって
目についたバーまで岡田さんを引っ張っていった。
「で、元カレなんでしょ?男前だねー。女といたのがショック?この時間だしねぇ」
ちょっと馬鹿にするような口調の岡田さんに

 

「付き合わせて、すみません」
ふてぶてしく返したが

 

「遊びたいってのが、別れた理由なんでしょ。そりゃ遊んでるでしょ。咲季ちゃんとは違った感じの子だったね」

 

更に意地悪なことを言われた。

 

「わかってたんですけど、そういうことするタイプじゃないって心のどこかで思ってたんですよね。しかも、この前、久しぶりに会って・・・」

 

その先を続けらずにいると

 

「あーそういうこと」
言いたいことを察した岡田さん。

 

「意外だね。そういうとこしっかりしてそうなのに」

 

「だって・・・。

 

 やっぱり、バカですよね」

 

溢れてくる涙をこらえながらカウンターに頭をつけると

 

わしゃわしゃと撫でてくれた。