コンペ

「おはようございますー」

 

声を絞り出しながら挨拶をすると

 

「珍しく遅いね。あと10分でミーティング始まるよ。咲季の分の資料も印刷しとくね」

 

「裕美さん、今日も私の女神さま!すんごい助かります!」

 

事務担当の裕美子さん(30才・美女)にお礼を言いながらPCを立ち上げる。

 

私が働くT−creationは広告代理店。

 

大手には規模ではかなわないものの、世間で話題になったCMや広告も多く業界ではクリエイティブのクオリティが高いことで有名。

 

 

私は、そこで営業として働いている。

 

 

まだ2年目だけど、お客様をメインで担当することもでてきて仕事の面白さと責任を感じている毎日。

 

昨日は結局、家に帰っても真弘との思い出ばかり頭に浮かび眠る気になれず1人でビールを飲み続けて二日酔い。

 

ぼーっとした頭のまま、PCと資料を抱えて毎週月曜のミーティングにのぞんだ。
イマイチ集中しきれない会議の最後。

 

課長の一言で、目が冴えた。

 

 

「そうだ、岡田が動いてるリアン飲料のコンペ、中村、サポートで入れ」

 

 

「え、リアンの企画って電波からまないんじゃなかったでしたっけ?」

 

 

「コンペ自体の規模大きくないが、仕事を自分で大きくすることを学べ。今回のは岡田、クリエイティブのやつらとでっかく仕掛けにいくだろうからな」

 

 

岡田さんの肩に手を置いて、課長は会議室から出ていった。

 

去年1年間、私の教育担当をしてくれていた岡田健吾さん。
営業歴10年目のベテランさん。
「コンペの鬼」と呼ばれていて、コンペで負けなしのスーパー営業マンなのだ。

 

久々に岡田さんと一緒の企画に携われるのが嬉しくて

 

「岡田さん、よろしくお願します!」

 

勢いよく大きな声を出してしまって笑われてしまった。
「咲季ちゃんと一緒ってのは久しぶりな感じだね。
午後クリエイティブとの打合せあるけど、予定どう?」

 

「今日、クライアントとのアポないんで大丈夫です!打合せまでに、コンペの概要把握したいです!資料ありますか?」

 

岡田さんにお願いすると、

 

「前のめりだねー。じゃあ、腹減ったし昼飯食いながら共有するよ。いつもんとこ行こうよ」

 

 

 

 

PC片手に2人でやってきたのは岡田さんお気に入りの定食屋さん。

 

 

「おばちゃん、から揚げ定食2つ」

 

 

すぐに運ばれてきた、から揚げ定食を食べながら、岡田さんのPCに入っているコンペ概要を読み込んだ。

 

私がサポートに入ることになったのは、業界2番手のリアン飲料の、リアンウイスキー50周年企画。

 

若い世代の飲酒離れもあり、特に販売が伸び悩んでいるウイスキー。

 

リアン飲料の拡大を支えたウイスキー人気を、50周年を機に、復活をさせたいというのが今回の目的。

 

 

コンペには私たちの T−creationの他、大手のD 社、S社も含めて5社が参加予定。

 

 

 

資料を読みながら、岡田さんに疑問をぶつけた。

 

 

 

「これ単発の企画ですよね。

 

―――――なんでわざわざ、コンペなんですか?」