こみ上げる思い

咲季ちゃん、それいいよ!昔役員の1人が、ウイスキーを飲みながらじっくり語る大人の文化をつくったのはリアンだって誇らしげに言ってたんだよ。M1ターゲットだと彼ら自身で手に取ってもらう難易度は高い。だからこそ、馴染みのある世代から薦める、『文化の継承』のイメージってどうだろう。これだったら周年企画だけじゃなく、いろんなバージョンでシリーズ化もいけそうじゃない」

 

 

「それだったら、シーンをビジュアルで見せよう!動きでるビジュアル、欲しいね。シリーズ化するためのストーリーとビジュアルがキモだ」

 

 

会議室の温度が一気に上昇した瞬間だった。

 

そして、そこからはトントン拍子に企画の骨子が決まっていた。

 

 

「よし。先が見えたことだし、今日はもう飲みにいこう!」

 

 

森さんの一言で、居酒屋に場所を移した。
「ビジュアル誰に頼もうかー。陽、スケジュール空いてないかな」

 

「そういえば、この前オフィスで見かけましたよ。こっちいるんじゃないですかね」

 

 

ビール片手に、さっきのテンションのまま打合せが続いていた。

 

 

「陽さん、って?」

 

打合せの内容が気になりつつも、机の上に置いたスマホが震え席を立った。

 

 

 

「元気?」

 

スマホから聞こえた声に戸惑った。
慌てて席を立ったから誰からか確認せずに電話に出た自分を後悔しても遅かった。

 

 

「なんの用?

 

 

―――――――――――――真弘」

 

 

 

「お客さんから明日の交流戦のチケットもらってさ。一緒にいかない?」
来てしまった。

 

昨日、真弘からの電話を受けて

 

「仕事終われたらいく」

 

なんて返事をしたものの、リアンの企画も方向性が決まり、差し迫って私がやらなくてはいけないことがなくなってしまった。
そして、本当に久しぶりにクライアント先から直帰できてしまい、球場まで来てしまった。

 

 

「咲季、こっち!来れてよかったな。おつかれ」

 

ふんわり微笑んだ真弘を見て

 

やっぱり好きだな

 

って気持ちが急に込み上げてきて泣きそうになった。

 

そんな気持ちを隠すように
「たまたまタイミングよかったの。しかもフィールドシートでしょ!こんなおいしいチケット逃すのもったいないもん!」
と真弘に会いたくて来たんじゃなくて、野球を観に来たんだ、と自分にも言い聞かせた。