とっかえひっかえ

企画概要と方向性を説明する岡田さんと

 

「今回はコンペだけじゃなくて、シリーズ化狙いたいから、何としてでも陽にやってほしいんだ」

 

熱く語る森さん。それに対して

 

「いいんじゃない。今月はこっちいるし、予定あけるよ」

 

陽さんは驚くほどそっけなく、承諾の返事をした。

 

ここに着いてから、ものの10分。

 

 

「さ、用件すんだし、飲みいこ」

 

ビアガーデンかなー、と行き先をすでに考えてる森さんに向かって

 

「今レタッチ途中なのあるから、これ済んだら後から追いかけるよ。店決まったらメールでもいれといて」

 

と、すでにPCで作業を再開している陽さん。

 

仕事の依頼というより、飲みに誘いに来たんじゃないかと思いつつ
森さんの後を追った。

 

私たち3人は陽さんの事務所近くにあるビアガーデンにやってきた。

 

 

夜は少し涼しくなってきたとはいえ、冷えたビールが気持ちよかった。

 

「いい飲みっぷりだねー。そういえば、咲季ちゃん今日昼から飲んでた?」

 

1杯目を早々に飲み干す私を横目に、森さんから鋭い突っ込みが。

 

「あれ、ばれちゃいましたか。そんな飲んでないんで、大丈夫かと思ってたんですが」

 

お酒飲んだ状態で来たことに怒られるかと苦笑いでごまかそうとしていると

 

「今日、咲季ちゃんいつもと香りが違ったから。俺、女の子の匂いに敏感なんだよね。」

 

私の首筋あたりに近づいてクンクンしてくる。

 

反応に困っていると

 

「森さん、それセクハラですよー」

 

おかわりのビールを手渡しながら岡田さんが引き離してくれた
それでも

 

「なになにー、デート?」

 

とからかってくる森さんに

 

「いやいやデートじゃないですよ。フラれたとこですし」
思わず素直にこたえてしまった。

 

言ってから、余計なこと言っちゃったと後悔していると、びっくりした顔をした岡田さんと目があった。

 

「フラれたって、学生ん時から付き合ってるって彼氏?」

 

「へー、彼氏いたんだ。なんで別れたの?なんで、なんでー?」

 

触れてほしくないのに、深堀ってくる2人。

 

 

「なんか私とは結婚するとは思うけど、今は遊びたいらしいですよー。私じゃ満足できないんでしょうねー」

 

やけになって勢いで話してしまった。
「えー、俺だったら咲季ちゃんで大満足だよ。
 俺にしとく?」

 

ふざけた口調の森さんに

 

「森さん、仕事以外ほんと残念ですよね」

 

冷たい視線を向けてみる。

 

森さんは、広告賞をとったこともある敏腕ディレクターな上にワイルド系イケメンということもあり、どこぞのモデルと歩いてたとか、女関係の噂には事欠かない。質が悪いのが毎回噂の相手が違うこと。いわゆる、とっかえひっかえ、というやつだ。

 

「咲季ちゃん、今の傷ついた。かわいそう、俺!慰めて」

 

さらにふざけてくる森さんの口にソーセージを突っ込んでやった。

 

「咲季ちゃん強くなったねー」
岡田さんは、そのやりとりをおかしそうに眺めている。そんな岡田さんにもイラッとして

 

「もう、いいんです。仕事に生きます!」

 

と宣言して、ビールに逃げた。