楽しい飲み会

「あー、陽さん。待ってましたよー。2人がいじめるんです。
 助けてくだしゃいよー」

 

意識ははっきりしつつも呂律のまわらない口調で遅れてやってきた陽さんを迎えた。

 

 

「なに、この女酔ってんの」

 

「フラれたとこなのに、森さんがいじめるから」

 

「いや、俺悪くないでしょ、咲季ちゃんの自爆だよ」

 

ヒソヒソと話している3人に

 

「自爆じゃないし!そもそも酔ってないでしゅよ」

 

説得力のない主張をしてみた。

 

 

その後は、陽さんの最近の仕事の話で盛り上がった。
「直近で行ってたのは商売用じゃないやつ。でもこの前みせたら、使いたいって話になったから、なんかのパッケージになるっぽい」

 

「なるっぽいって、お前相変わらずだねー」

 

陽さんは今回のように依頼をもとに商業用の写真を撮っていて、実は森さんが賞を獲った広告のメイン写真も陽さんのもの。そういう仕事の一方で、自然とそこで暮らす人をテーマにした写真を撮っていて、この前までは北欧に撮影旅行に行っていたらしい。

 

「北欧って、フィヨルドとか水辺?」

 

「いや、今回は森。すごい色がよかったんだよ」
思い出すように少し目を細めた陽さんは、優し気な雰囲気を出していた。

 

「森と言えば、ハウスメーカーのやつ好きでしたよ」

 

岡田さんの一言で、アルコールに侵食されていた頭がクリアになった。
「え、それって森の中を子どもが駆けてるやつですか?」

 

「そうそう。当時結構話題になったよね」

 

「あれ、陽さんなんですか!?私あれ見て、この業界入りたいって思うようになったんです」

 

興奮した私に厳しい一言が飛んできた。

 

「仕事頼みにきといて、俺の過去の作品知らなかったとか、ちょっと勉強不足じゃない?」

 

やばい、と思いつつ言葉に詰まっていると

 

「いや、咲季ちゃんには今日いきなり声かけちゃったんですよ。俺の段取りが悪いです。すんません。」

 

岡田さんが陽さんに向き合って、頭を下げていた。

 

とはいえ、ビジュアルが重要だっていう話になっていたのに、カメラマンの候補に頭が回っていなかった自分が悪い。あの打合せの後、真弘からの電話に気を取られて、浮かれてしまっていたのだ。

 

”仕事に生きる”

 

なんて言いながら全然ダメだ。

 

「いえ、陽さんの言う通りです。先読みして動けていなかった私がダメだったんです。岡田さんも、すみません」
自分への悔しさに震えながら、謝罪を口にだすのが精一杯だった。

 

陽さんは、そんな私をちらっと横目で見て
ふーん、とビールを口にしながら頷いていた。

 

口を挟まずにビールを飲んでいた森さんが、張り詰めた空気を変えるように
「そういえば」
と最近デートした女の子の話をし始めて、結局楽しいまま飲み会は終了した。