きみと過ごす、この時間

――――――週明け

 

 

朝いつもより早く出社して資料室からポートフォリオを探し出した。

 

「Yoh Kondo」

 

クレジットが入った写真1枚1枚を見て、これも陽さんの作品なんだ、とびっくりした。

 

広告賞をとった写真だけでなく、アーティストのCDジャケットや本の表紙までいろんな分野で話題なり、見覚えのある作品が多かった。

 

なんかぶっきらぼうな感じの人だったけど、作品はやっぱり素敵だな、そう思いながらポートフォリオを閉じた。

 

 

 

そして、
コンペに向けて内容を詰めていく作業は
本格的に慌ただしくなっていった。
「やっぱり、これでしょ。これだったら、タグラインとしても使える」

 

コピーライターさんが持ってきた50以上ものキャッチ案の中から、打合せメンバー全員の意見が一致した。

 

 

”きみと過ごす、この時間”

 

 

 

「コンペではこれに合わせて、ビジュアル5案くらい持ってきたいです。シリーズ展開できますよってのも見せたいから」

 

岡田さんはニヤリとしながら森さんを見た。

 

 

「シーンのバリエーションだな。1つはもうイメージあって、親父と息子バージョン。人生の先輩として色々伝えたいことの1つがウイスキーを楽しむこの時間、的な」

 

「役員のおじさま方、好きそうですね」

 

さすが森さんだな、感心した。

 

そこからは、全員で案を出していきながら最終的にシーンを5つまで絞った。
他の打合せで動けない岡田さんを置いて、森さんと2人で訪れたのは陽さんの事務所。

 

「で、コンペ用に俺に2シーン、撮れと」

 

「そう。他のはありもののダミーで組んじゃえばいいんだけど、この2シーンはちゃんとしたクオリティで勝負したいんだよ」

 

そう身を乗り出して話す森さん。

 

 

「俺に撮らせるからには絶対勝てよ」

 

「当たり前だろ」

 

 

この日も、ものの15分で話がまとまり

 

 

翌週のスケジュールを無理矢理あけてくれることになった。
そしてメインビジュアルの撮影日

 

 

1案は昨日既に撮り終えていた。
マンションのベランダで電話をしながらウイスキーを飲んでるシーン。
単身赴任中のお父さんをイメージしたシーンで、月を見せながら都会であることが一目でわかる構図を一瞬にしてつくりだした陽さんに、感服した。

 

そして、今日。
メインで使う予定の父親と息子のシーンのために海まで撮影に来ていた。

 

 

「日がもうちょっと落ちるの待ちたい」

 

すぐに構図を決めた陽さんはファインダーから目を外し、ぼーっと海を眺めていた。

 

営業としては、ほとんどすることのない私は小物のセッティングの手伝いや、スタッフのみなさんにコーヒーを配ったりと、日待ちの時間を持て余していた。